得点圏打率は、二塁か三塁に走者がいる場面(得点圏)での打率です。「得点圏安打 ÷ 得点圏打数」で計算します。単打1本で走者が本塁に還れる場面での打撃を表すため、「チャンスに強い打者か」を見る数字としてよく使われます。
この記事では、得点圏打率の計算方法と、打点との違い、そして「得点圏打率で勝負強さが分かるのか」を、計算例と研究の結果をもとに解説します。
得点圏とは
得点圏は、単打1本で走者がホームに還れる可能性が高い塁、つまり二塁と三塁のことです。走者の状況は8通りあり、そのうち6通りが得点圏です。
| 走者 | 得点圏 |
|---|---|
| なし | × |
| 一塁 | × |
| 二塁・三塁 | ○ |
| 一二塁・一三塁・二三塁 | ○ |
| 満塁 | ○ |
一塁に走者がいても、二塁か三塁にもう1人いれば得点圏です。英語では「Runners In Scoring Position」の頭文字を取って RISP と書きます。
得点圏打率の計算方法
得点圏打率 = 得点圏安打 ÷ 得点圏打数
数え方は、ふつうの打率と同じです。得点圏の打席のうち、四球・死球・犠打・犠飛・打撃妨害は打数に入りません。三振・凡打に加えて、失策や野選で出塁した打席は、打数に入って安打にはなりません(打数の数え方は「打率とは?」で解説しています)。
ある打者の、1シーズンの得点圏の打席が次の10打席だったとします。
| 得点圏の打席の結果 | 打席 | 打数 | 安打 |
|---|---|---|---|
| 安打(単打) | 2 | 2 | 2 |
| 二塁打 | 1 | 1 | 1 |
| 四球 | 2 | 0 | 0 |
| 犠飛 | 1 | 0 | 0 |
| 内野ゴロ(その間に三塁走者が生還) | 1 | 1 | 0 |
| 三振 | 2 | 2 | 0 |
| 相手の失策で出塁 | 1 | 1 | 0 |
| 合計 | 10 | 7 | 3 |
得点圏打率は、3 ÷ 7 = .429 です。
ここで、犠飛と内野ゴロに注目してください。どちらも三塁の走者を還していますが、犠飛は打数に入らないので得点圏打率は変わらず、内野ゴロは打数に入るので得点圏打率を下げます。得点圏打率は「走者を還したか」ではなく、「得点圏で安打を打ったか」だけを見る数字です。
得点圏打率と打点の違い
チャンスでの打撃を表す数字には、得点圏打率のほかに打点があります。2つは、似ているようで見ているものが違います。
| 得点圏打率 | 打点 | |
|---|---|---|
| 何を数えるか | 得点圏での安打の割合 | 打撃で還した走者(と自分)の数 |
| 犠飛・内野ゴロで1点 | 増えない(内野ゴロは下がる) | 1増える(併殺打の間の得点は除く) |
| 本塁打 | 安打1本(走者なしの本塁打は入らない) | 走者の数+1 |
| 得点圏で打つ機会の数 | 割合なので、機会の多さには左右されにくい | 機会が多い打者ほど増えやすい |
打点は、前の打者がどれだけ塁に出たかに大きく左右されます。出塁率の高い打者の後ろを打つ打者は、得点圏で打席に立つ回数が多くなり、打点も増えやすくなります。得点圏打率は割合なので、打席の機会の多さの影響は受けにくい反面、外野フライや内野ゴロで1点を取る打撃は評価されません。2つをあわせて見ると、チャンスでの打撃が分かりやすくなります。
得点圏打率で「勝負強さ」は分かるか
得点圏打率が高い打者は「勝負強い」と言われます。ただ、メジャーリーグの研究では、チャンスでの成績が良い打者が、翌年もチャンスで良い成績を残すとは限らないことが知られています。
ディック・クレイマーとピート・パーマーの研究(2008年。試合の終盤の接戦など、勝敗への影響が大きい場面の成績を調べたもので、得点圏打率そのものを調べたものではありません)では、2年続けての「チャンスでの成績」の相関(r²)は 0.002 で、ほとんど関係がありませんでした。比べて、OPS の相関は 0.43 でした(出典:Dick Cramer, Pete Palmer「Clutch Hitting Revisited」(SABR)。英語)。チャンスでの打撃の差は、選手の力の違いよりも、偶然のぶれで説明できる部分が大きい、とこの研究は結論づけています。
もう1つの理由は、得点圏の打席が少ないことです。たとえば、得点圏の打席が全打席の4分の1なら、1シーズンに40打席立つ選手でも、得点圏は10打席ほどです。その数では、1本の安打で得点圏打率が1割以上動きます。
| 得点圏打数 | 安打1本の差で変わる得点圏打率 |
|---|---|
| 8 | .125(例:2安打なら .250、3安打なら .375) |
| 20 | .050 |
| 100 | .010 |
走者がいると、打者に有利なことが多い
これはわたしの個人的な意見ですが、ほとんどの打者は、走者がいない場面より、走者がいる場面のほうが打率が高くなる傾向があります。理由はいくつかあります。
- 守備位置が変わる:走者がいると、守備位置が定位置から、ゲッツーシフト(併殺を狙う守備)や前進守備に変わり、ヒットゾーンが広がります
- 投手の投げ方が変わる:ワインドアップで投げる投手は、セットポジションで投げることになります。走者にも気を配らなくてはなりません
- 打者の狙いが変わる:長打ではなく、ヒットを狙う打ち方に切り替える打者も多いでしょう。チャンスで集中力が高まる打者もいます
すべてが打者に有利に働くわけではなく、投手がピンチで力を入れることもありますし、打者がチャンスで緊張したり、力が入ったりすることもあります。それでも、どちらかというと、走者がいることで打者に有利に働くことが多いと思います。そのため、得点圏打率は、走者がいないときの打率より高くなることが多いです。
ふつうの打率と比べる
得点圏打率の高さが、その選手の打撃の力そのものなのか、チャンスでの強さなのかを見分けるには、その選手のふつうの打率と比べる方法があります(出典:ベースボールチャンネル「得点圏打率だけでは表れない真の勝負強さ」(広尾晃、2015年))。
たとえば、得点圏打率 .350 の選手でも、打率が .380 なら、チャンスではいつもより打てていません。反対に、得点圏打率 .300 で打率が .250 の選手は、チャンスでいつもより打てています。ただし、上で書いたように、走者がいると打者に有利になる面もあるので、得点圏打率が打率より少し高い程度なら、珍しいことではありません。順位の数字だけで決めず、打率との差と、得点圏の打数をあわせて見るのがおすすめです。
投手の「得点圏被打率」
投手の側からは、得点圏被打率(得点圏で対戦した打者に、どれだけ安打を打たれたか)を見ます。計算は「得点圏被安打 ÷ 得点圏打数」で、低いほど、走者を背負ってから粘れていることになります。
ただし、打者と同じく、得点圏の対戦は数が少なく、ぶれやすい数字です。被打率(走者がいない場面も含めた全体)と比べて見るとよいでしょう。
学生野球や草野球で見るときの注意
得点圏打率には決まった目安が無く、プロの数字もあまり参考にならないので、チームの中で比べるのがおすすめです。得点圏打率ならではの注意として、次の点があります。
- タイブレークの回は、最初の打者から得点圏になることが多いです。二塁(ソフトボールに多い)や一二塁・満塁から始まるタイブレークでは、走者を置いた状態から打席に入るため、その回の打席は得点圏になりやすくなります。タイブレークのある大会に多く出たチームでは、得点圏の打席が多めに出ます
- 相手の失策で走者が進んだ場面も、得点圏です。失策の多い試合では、得点圏の打席が増えます。得点圏打率は、相手の守備で作られたチャンスでの打撃も含んだ数字です
- 打順によって、得点圏で打つ回数が大きく違います。1番打者は、1回の最初の打席が必ず走者なしになります。得点圏の打数が少ないほど1本の安打で大きく動くので、得点圏打率を比べるときは、得点圏の打数が近い選手どうしにしましょう
Bmcs で得点圏打率を見る
Bmcs では、打席ごと(プレー毎)に入力した試合は、得点圏の打席・打数・安打を自動で数えます。打者の結果が出る直前の走者で判定するため、一塁の走者が打席の途中の盗塁や暴投で二塁に進んだときも、その打席は得点圏の打席に数えます。反対に、打席の途中の盗塁死や牽制死、暴投での生還などで、得点圏の走者がいなくなったときは、数えません。タイブレークで二塁や三塁に走者を置いて始めたときは、その回の最初の打者から得点圏の打席になります。
試合結果のみで入力する試合は、打者の「得点圏」の「打席」「打数」「安打」(投手は「打席」「打数」「被安打」)を入力すると集計されます。入力しないと、その試合は得点圏の成績に数えません(試合結果のみの試合しか無い選手は、得点圏打率が「-」になります)。入力方法は「試合を入力する(試合結果のみ・まとめて入力)」をご覧ください。
メニューの「成績」には、規定打席に届いた選手の得点圏打率の順位が出ます。規定打席は全体の打席で判定するので、得点圏の打数が少ない選手も順位に入ります。

「野手成績詳細」には、得点圏打率と、得点圏打席・得点圏打数・得点圏安打の列があり、打率と並べて比べられます。「投手成績詳細」には得点圏被打率、「チーム成績詳細」にはチームの得点圏打率と、投手陣の得点圏被打率があります。
公開しているチームでは、選手ごとの「選手の分析」の「状況別」で、走者なし・走者あり・得点圏の打率と打点を並べて見られます。状況別は、プレー毎で入力した試合の打席から集計します(「選手の分析を見る」)。打点とあわせて見られるので、上の「得点圏打率と打点の違い」を確かめるのに便利です。
全員の一覧の見方や表示する項目の選び方は「試合を確定する・成績を見る」をご覧ください。
まとめ
- 得点圏打率は、二塁か三塁に走者がいる場面での打率。得点圏安打 ÷ 得点圏打数で計算します
- 犠飛・四球は打数に入らず、内野ゴロで1点を取っても得点圏打率は下がります。「走者を還したか」ではなく「安打を打ったか」を見る数字です
- 打点は前の打者の出塁に左右され、得点圏打率は外野フライや内野ゴロでの1点を評価しません。2つをあわせて見ましょう
- メジャーリーグの研究では、チャンスでの成績は年ごとのぶれが大きく、偶然の影響が大きいとされています
- 運営者の考えでは、走者がいると守備位置や投手の投げ方が変わり、打者に有利なことが多いため、得点圏打率は走者がいないときより高く出やすくなります
- 得点圏の打数は少ないので、ふつうの打率との差と、得点圏の打数をあわせて見るのがおすすめです
得点圏打率の元になる打率の数え方は「打率とは?」、塁に出る力は「出塁率とは?」で解説しています。チャンスを作る打者と、還す打者の両方を見ると、打順を組むときの参考になります。Bmcs は無料で、スマホから試合のスコアを入力できます。まずはサンプルチームで体験してみてください。