野選(やせん)は、打球を処理した野手が、打者ではなく先の走者をアウトにしようとして他の塁へ送球することです。英語では「フィルダースチョイス(fielder's choice)」、日本語では「野手選択」とも呼びます。打者には安打が付かず、打数には入ります(バントの場合は例外があります。後で説明します)。
この記事では、野選になる場面と、安打・失策・ふつうのゴロとの見分け方を整理します。成績への影響や、継投したときの失点の責任、Bmcs での入力方法も解説します。打点・自責点の扱いは、公認野球規則の 9.04・9.16 に出てきます。
野選ですが、一般的に知れ渡っている認識と公式上の扱いが一致していないので、少しやっかいです。世間一般的に知られている野選は、走者がオールセーフになるケースです。観戦していて、内野ゴロを二塁で封殺した場面のことを「野選だ!」という人はほとんどいないでしょう。普通にショートゴロやセカンドゴロなどと認識します。ただ、公式的にはどちらも野選と言えます。ややこしいですね。。
規則の用語としての野選と、スコアボードの野選(Fc)
野選には、2つの意味があります。
- 規則の用語:公認野球規則の「用語の定義」では、フェアのゴロを扱った野手が、打者走者を一塁でアウトにする代わりに、先の走者をアウトにしようとして他の塁へ送球する行為を、野手選択といいます。送球の結果は問いません。先の走者を封殺して打者が生きた場面も、この行為にあたります。規則の失点の決まり(9.16(g))も、前の投手の走者をアウトにした野手選択で打者が出塁する場面を、野手選択として扱っています
- スコアボード・報道の野選(Fc):スコアボードの「Fc」は、打者を含む走者全員がセーフになったときに点灯します(野手選択(Wikipedia)、Full-Count「野球用語辞典」)。打撃の記録に「野選」という項目はなく、打者には(バントの場合を除いて)打数が付くだけです
どちらの場面でも、打者の成績は「打数1、安打なし」で同じです。違うのは呼び方と、スコアブックへの書き方です。走者を封殺して打者が生きた場面をスコアブックに「FC」と書くか、内野ゴロの記号で書くかは、解説によって違います。チームの中で書き方をそろえておけば、成績は変わりません。
野選になる場面
野手は、ゴロを捕ったときに「どの塁に投げるか」を選べます。一塁に投げれば打者をアウトにできるのに、あえて別の塁に投げたときが、規則の用語の野選(野手選択)です。
- 走者を封殺して、打者が生きた:無死一塁で遊ゴロ。二塁へ投げて走者は封殺、打者は一塁セーフ(規則の用語では野選。スコアボードに「Fc」は出ない)
- 走者を狙ったが間に合わず、全員がセーフ:無死一塁で三ゴロ。二塁へ投げたがセーフ、打者も一塁セーフ(オールセーフ。スコアボードに「Fc」が出る)
- 本塁を狙ったが間に合わず、点が入った:一死三塁で二ゴロ。本塁へ投げたがセーフ、打者も一塁セーフ
打者に付く記録は「打数1、安打なし」
野選のとき(走者を封殺した場面を含む)、打者の記録は次のとおりです。
- 打数に入る(打席数にも入る)
- 安打にはならない(塁に出ても、打率の分子には入らない)
- ただし、2アウト前のバントで、野手が先の走者をアウトにしようとして失敗し、普通の守備なら打者を一塁でアウトにできたときは、野選ではなく犠打になり、打数に入りません(9.08(b))。普通の守備でもアウトにできなかったときは、安打です
- 打点は、点が入れば付く場合がある(後で説明します)
打者は一塁に生きているのに、記録の上では「アウトと同じ扱い」になります。これが、野選が打率や出塁率を下げる理由です。
野選・ゴロ・安打・失策の見分け方
野手がどの塁に投げたか、その結果どうなったかで、記録は次のように分かれます。分かれ目は、何がアウトにならなかった理由かです。
| 場面 | 記録 | 分かれ目 |
|---|---|---|
| 一塁へ投げれば打者はアウトだったが、二塁へ投げて走者を封殺し、打者は生きた | 野選(規則の用語)。スコアボードは Fc ではなく、成績は打数1・安打なしでふつうのゴロと同じ | 野手が走者を選んだ |
| 二塁へ投げたが間に合わず、オールセーフ。一塁へ投げれば打者はアウトにできた | 野選(Fc) | 野手が走者を選んだ(結果は失敗) |
| 二塁へ投げた送球を、二塁手が落としてオールセーフ。捕っていれば封殺だった | 失策 | 送球・捕球のミス |
| 二塁へ投げたが間に合わず、一塁へ投げていても打者は間に合わなかった打球 | 安打 | 打球が速く、普通の守備でもアウトにならない |
| 一塁へ投げて、打者がアウトになった | ふつうのゴロ(アウト) | 打者を選んだ |
安打と失策の分け方は、別の記事の「ヒットかエラーか?」にまとめています。野選かどうか迷ったときは、走者がセーフになった(封殺できなかった)場面なら、**「一塁へ投げていたら、打者はアウトだったか」**を考えるのがおすすめです。アウトにできたのに別の塁を選んだなら野選、一塁でも間に合わなかったなら安打、と分けます。
走者を封殺したときは、打者が一塁でも間に合わない打球だったとしても、安打にはしません。打球で走者が封殺されたときは安打を記録しない、と決まっているからです(9.05(b)(1))。
野選で成績はどう変わる?
野選は、打者・投手・チームの成績に、次のように入ります。
| 成績 | 野選の扱い |
|---|---|
| 打数 | 入る |
| 安打 | 入らない |
| 打率 | 打数に入るので、下がる |
| 出塁率 | 分子には入らない。分母には入る |
| BABIP | 分母に入る(失策での出塁と同じ) |
| 打点 | 野選で入った得点には付く |
| 投手の被打数 | 入る |
| 投手の WHIP | 入らない(走者に数えない) |
細かい計算は、それぞれの記事で説明しています。野選の扱いは、打率なら「打率とは?」、出塁率なら「出塁率とは?」、BABIP なら「BABIPとは?」にあります。
野選で入った得点には、打点が付く
野選で走者が還ったとき、打者に打点が付きます(9.04(a))。たとえば一死三塁で二ゴロ、本塁へ投げたがセーフで三塁走者が還ったとき、打者に1打点が付きます。
ただし、失策がなければ走者が還れなかった場面は、野選ではなく失策です。打点の考え方は「打点とは?」にまとめています。
野選で入った得点は、自責点になりうる
自責点は、失策と捕逸がなかったものとしてイニングを組み立て直して、点が入ったかどうかで決めます(9.16(a))。野選は失策ではないので、ほかに失策がなければ、野選をきっかけに入った点も、自責点になります。
投手が交代したときの、野選と失点の責任
野選には、投手が交代するときに独特の決まりがあります。投手は、自分が塁に残した走者の人数までの得点に責任を持ちます(9.16(g))。
たとえば、投手Aが走者を2人残して降板し、救援の投手Bに代わった直後に野選があったとします。Aが残した走者の1人が封殺され、打者が一塁に生きました。塁には、Aが残した走者1人と、Bが対戦した打者の2人がいます。見た目はA・Bの走者が1人ずつですが、規則では、打者の出塁は「Aが残した走者と入れ替わった」と考えるため、Aの責任の人数は2人のままです。このあと2人が還ったら、どちらもAの失点です。野選で走者と打者が入れ替わっても、Bの責任は増えません。
Bmcs でも、走者の個人ではなく人数で数えて、前の投手の責任にしています。前の投手が残した走者が盗塁死や牽制死のように、打者の行為によらずにアウトになったときは、前の投手の責任の人数から減らします。
スコア入力は、ふつうのゴロでよいと思います
パワプロでもテレビ中継でも、二塁封殺時の結果は○○ゴロと表示されますし、実況もフィルダースチョイスと言ったことはないと思います。打数に加算されるなど、成績に反映される内容も同じです。ですので、スコア入力時も、普通に内野ゴロとして記録するのが個人的には良いと思います。その方がわかりやすいですしね。Bmcsのスコア入力上の野選もオールセーフ時の野選を想定しています。ちなみに、わたしが野選を覚えたのは、子供のころのパワプロの実況で「オールセーフ!記録はフィルダースチョイス!!」と言っていたので、それで覚えました!
Bmcs で野選を入力する
どちらの入力でも、打数・打席・被打数・打率・出塁率などの成績は同じです。場面によって、入力を使い分けます。
- オールセーフになった場面:結果の「その他」にある「野選」を押します。走者がいないときは、野選は起こりえないので押せません
- 走者を封殺して、打者が生きた場面:ふつうのゴロ(「ゴロ(アウト)」)として入力して、確認の画面で打者を「一」、封殺された走者を「アウト」に直します。「野選」を押して、走者を「アウト」に直してもかまいません。違いは、ゴロで入力すると、選手の分析の「ゴロ凡打」「ゴロのアウト」と、野手の「アウトにした打球」にも数えられることです(野選では数えません)
野選を押すと、打球の種類と、打球を処理した野手の位置(遊ゴロなら「遊」)を選んだあと、確認の画面で走者の進み方を確かめます。走者は、打者と同じ数の塁だけ進む初期値になっています。

得点は、初期値で「打点」「自責点」が付きます。手順の詳しい説明は、ヘルプ「試合を入力する(プレー毎)」にあります。打者が塁に出る打席では、刺殺・補殺は自動では付かないため、守備の回に封殺された走者の分は、「+失策など」から足します。刺殺・補殺の付け方は、「刺殺・補殺とは?」で説明しています。
バントの場面は、結果に「犠打」を選びます。
試合結果のみで入力する試合には、野選の項目はありません。野選は打数に入るので、選手の打数には野選の打席も含めて入れます。
まとめ
- 野選は、打球を処理した野手が、打者ではなく先の走者をアウトにしようとして他の塁へ送球することです。規則の用語では、走者を封殺した場面もオールセーフの場面も野選(野手選択)ですが、スコアボードの「Fc」は、全員がセーフになった場面だけです
- 打者は打数1、安打なしになります(バントで、普通の守備なら打者をアウトにできたときは、犠打で打数に入りません)。出塁率や打率は下がります
- 点が入れば打点が付き、自責点にもなりえます
- 走者がセーフになった場面で迷ったときは、「一塁へ投げていたら打者はアウトだったか」で考えます。アウトにできたなら野選、間に合わなかったなら安打、送球・捕球のミスなら失策です。走者を封殺したときは、安打にはしません
- 投手が代わったときは、前の投手の残した走者の人数までの得点が、前の投手の責任です
- Bmcs では、オールセーフなら「その他」の「野選」、走者を封殺したならふつうのゴロとして入力します。打数・打率などの成績は同じです
野選は、守備の判断が記録に出る場面です。Bmcs は無料で、スマホから試合のスコアを入力できます。まずはサンプルチームで体験してみてください。