ヒット(安打)かエラー(失策)かは、野手が「普通の守備」でアウトにできた打球かどうかで決めます。普通に守ればアウトにできたのに、捕り損ないや悪送球で打者が塁に出たら失策、普通に守ってもアウトにできない打球なら安打です。判断に迷ったときは、安打にするのが公認野球規則の考え方です。
スコアをつけていると、「今のはヒット?エラー?」と迷う打球が必ず出てきます。この記事では、安打と失策を分ける基準と、迷いやすい場面の記録の例、どちらに記録するかで打率や防御率がどう変わるかを解説します。
判断の基準は「普通の守備」
公認野球規則で安打・失策を決めるときに使うのが、「普通の守備」(英語では ordinary effort)という考え方です。普通の守備とは、そのリーグ・そのクラスで、その守備位置を守る平均的な技量の野手が見せるはずの守備のことで、グラウンドの状態や天候も考えに入れます(公認野球規則の「定義」による。MLB の用語集にも、同じ趣旨の説明があります:MLB「Ordinary Effort」。英語)。
ここで大切なのは、基準がプロの野手ではないことです。
- 中学野球なら、中学生の平均的な野手が基準です。草野球なら、そのリーグで守っている平均的な野手が基準です
- プロなら捕れる打球でも、そのレベルの平均的な野手が捕れない打球なら、安打にします
- 雨でぬかるんだグラウンド、強い日差し・風など、その日の条件も考えに入れます
安打になる打球
公認野球規則(9.05)では、次のような打球で打者が一塁に生きたときに、安打を記録します。
- 野手の届かないフェア地域に落ちた打球、フェンスに当たった打球、フェンスを越えた打球
- 強すぎる・弱すぎる(ボテボテの)打球で、野手が処理しようとしても、打者をアウトにする機会がなかったとき
- イレギュラーバウンドした打球や、ベース・投手板に当たってはねた打球で、普通の守備では処理できなかったとき
- 野手に触れずに外野まで抜けた打球(普通の守備で処理できたと判断したときを除く)
- 野手が先の走者をアウトにしようとして失敗し、普通の守備でも打者を一塁でアウトにできなかったと判断したとき
迷ったら、安打にする
公認野球規則は、安打の判断で迷ったときは、いつも打者に有利に(安打に)するよう求めています。また、野手が特に良い守備を見せたのに、アウトにできなかったときは、安打にするのが無難だとしています。
たとえば、三遊間の深いゴロに遊撃手が飛びついて捕り、一塁へ送球したが間に合わなかった打球は、安打です。野手が打球に触れたかどうかは関係ありません。
失策になるプレー
失策(公認野球規則 9.12)は、普通の守備でアウトにできた打者・走者を、ミスで生かしたときや、ミスで走者に余分な塁を与えたときに、ミスをした野手に記録します。
- 正面のゴロをはじいた(ファンブル)、捕ったボールを落とした
- 悪送球で、アウトにできた打者・走者を生かした
- 正確な送球を、受ける野手が落とした(受けた野手の失策)
- 普通に捕れたフライを落とした。グラブに触れずに落ちても、普通の守備で捕れたなら失策です(打球が股の間を抜けたゴロも同じ)
- 普通に捕れたファウルフライを落として、打者の打席を延ばしたとき。そのあと打者がアウトになっても、失策を記録します
失策にならないミス
ミスに見えても、失策にしないものがあります。
- 判断のミス:一歩目で前後を間違えてフライに追いつけなかった、投げる塁を間違えた、などの頭の中のミスは、規則に特に決まりがない限り失策にしません(判断のミスの結果、ボールをはじくなどのミスが起きたら、そのミスは失策です)
- ゆっくりした処理:捕り損ないや送球のミスがなく、処理が遅れただけで打者が一塁に生きたときは、失策にしません
- 暴投・捕逸:失策ではなく、暴投(WP)・捕逸(PB)として記録します
- 四球・死球:投手の失策にはしません
- 併殺を狙った送球がそれても、打者を一塁でアウトにできなかっただけなら失策にしません(それた送球で走者がさらに進んだときは失策)
- 盗塁を刺そうとした捕手の送球がそれても、走者がさらに進まなければ失策にしません
迷いやすい場面の記録の例
| 場面 | 記録 | 理由 |
|---|---|---|
| 正面の平凡なゴロをはじいて、打者が一塁セーフ | 失策 | 普通の守備でアウトにできた |
| 三遊間の深いゴロに追いついたが、送球が間に合わない | 安打 | 普通の守備ではアウトにできない |
| 内野安打の当たりで、間に合わない一塁への送球がそれて、打者が二塁へ | 安打+失策 | 送球が正確でもセーフだった。二塁へ進んだ分だけ、送球した野手の失策 |
| 外野への単打を外野手がトンネルして、打者が三塁へ | 安打+失策 | 一塁までは安打。その先の進塁は外野手の失策 |
| 二塁で封殺を狙った送球を、遊撃手が落としてオールセーフ | 失策(打者に安打なし) | 失策がなければ走者は封殺だった |
| 二塁で封殺を狙ったが間に合わず、オールセーフ | 野選(野手選択。打者に安打なし) | 一塁へ投げれば打者をアウトにできた |
| 二塁で封殺を狙ったが間に合わず、一塁へ投げていても間に合わなかったと判断した打球 | 安打 | 普通の守備でも打者は一塁でアウトにならない |
| 平凡なフライの落下点に入ったのに、グラブに当てられずに落とした | 失策 | 普通の守備で捕れた |
| 普通に捕れるファウルフライを落とした | 失策(打席は続く) | 打者の打席を延ばした |
同じ打球でも、守っている野手のレベルによって記録が変わることがあります。迷った打球は、「この試合を守っている平均的な野手なら、アウトにできたか」で考えましょう。
正面の打球でも、速ければ安打にすることが多い
野手の正面に飛んだ打球でも、打球が速いときは、安打にすることが多いです。
- 投手・三塁手・一塁手は、打者との距離が近い分、打球に反応する時間がありません。正面の打球でも、安打になりやすい守備位置です
- 二塁手・遊撃手は、真正面の打球をはじけば、失策がつきやすいかもしれません。ただ、わたしは、定位置から少し動いて正面に入った打球なら、打球が速ければ安打にしてもよいと思っています
いちばん迷うのは、内野安打になりそうな打球
安打か失策かで、いちばん迷うのは、内野安打になりそうな打球ではないでしょうか。野手が普通に捕って投げた結果、一塁がセーフなら、文句なしの安打です。ところが、少しファンブルしたり、送球がそれたりしてセーフになると、判断が難しくなります。
「ファンブルや悪送球がなくてもセーフだったか」を考えて、セーフだったなら安打、アウトにできたなら失策にします。とはいえ、一瞬の差なので、見る人によって分かれやすい場面です。
なので、打者からすると、野手にはあまりファンブルしてほしくないんですよね。大学のとき、セーフティバントをした選手が、三塁手がファンブルしたのを見て「ファンブルすんなよ」と小声で文句を言っていたのを聞いたことがあります(笑)。
安打か失策かで、成績はどう変わる?
安打と記録するか、失策と記録するかで、打者・投手・野手の成績が変わります。
| 成績 | 安打と記録 | 失策と記録 |
|---|---|---|
| 打者の打数 | 1つ増える | 1つ増える |
| 打者の打率・出塁率 | 上がる | 下がる(塁に出ても、出塁には数えない) |
| 投手の被安打・WHIP | 増える・上がる | 変わらない |
| 失点したときの投手の自責点 | ほかに失策がなければ、自責点になる | 失策がなければ入らなかった点は、自責点にならない |
| 野手の失策・守備率 | 変わらない | 失策が増え、守備率が下がる |
失策での出塁は、打数には入るのに安打・出塁には入らないので、打者にとっては凡打と同じ扱いになります。学生野球や草野球のように失策の多い試合では、失策で塁に出た打席の多い打者の打率・出塁率が、印象より低く出ます(「出塁率とは?」)。
投手は、失策と記録すると被安打が増えず、失策がなければ入らなかった点は自責点から外れます(「防御率とは?」)。安打か失策かの判断は、打者の打率と投手の防御率の両方に響くので、同じ打球はいつも同じように記録することが大切です。
失策の間の得点と打点
失策の間に入った点には、原則として打点が付きません。ただし、2アウトになる前の失策で、失策がなくても三塁の走者が還れた打球だったときは、打点を付けます(公認野球規則 9.04)。たとえば、1アウト三塁で深い位置へのゴロを遊撃手がはじいたとき、普通に一塁でアウトにしていても三塁の走者が還れたなら、打者に打点が付きます。
チームで判断をそろえる
プロの試合では公式記録員が判断しますが、学生野球や草野球では、スコアをつける人が判断することがほとんどです。つける人によって判断が違うと、同じような打球が、ある試合では安打、別の試合では失策になってしまいます。
- スコアをつける人を、できるだけ決めておく。交代でつけるなら、判断の基準をチームで話し合っておきましょう
- 迷ったら安打、をチームの決まりにする。公認野球規則と同じ考え方なので、説明もしやすくなります
- 「普通の守備」の基準は、自分のチームではなく、そのリーグの平均的な野手で考える。守備の上手な人の多いチームで、基準を厳しくしすぎないようにしましょう
- その場で決めにくい打球は、メモしておいて、試合の後に打った人・守った人と相談して決めるのもおすすめです
Bmcs で安打・失策を入力する
プレー毎の入力では、打球が失策になったときは、結果の「失策(エラー)」を押し、打球の種類と飛んだ場所を選びます。飛んだ場所の守備位置の選手に、失策が自動で付きます。

- 送球のミスなど、飛んだ場所と違う野手の失策のときは、失策の札の「変更」で野手を直します(送球のエラーは、送球した野手)
- 安打の後に失策で進んだときは、結果は安打にして、「+失策など」から失策を足し、走者の進んだ塁を「アウト・一・二・三・本」で合わせます(「打撃と同時に起きたプレー」)
- 結果が失策の得点は、最初は打点・自責点とも付きません。2アウトになる前で、失策がなくても三塁の走者が還れた打球なら「打点」を、失策がなくても入った点なら「自責点」を押して付けます
- 反対に、結果を安打にして失策を足したときは、得点に打点・自責点が付いたままです。失策の間に還った走者は、「打点」「自責点」を押して外します
- ファウルフライの落球など、打席の途中の失策は、打席の結果を入れた後の確認の画面で、「+失策など」から足します
試合の後に話し合って、安打と失策の判断を変えたときは、試合結果の「イニング詳細」から、その打席を直し、「再集計する」「確定する」を押し直します(「試合が終わった後に直したい」)。
試合結果のみで入力する試合では、失策で塁に出た打席は、打者の「打数」に入れて「安打」には入れず、「敵失策」に数を入れます。失策をした自分のチームの野手は、「失策」に入れます。投手の「詳しい投球」には、相手の打者が失策で塁に出た数(「失策で出塁」)も入れられます。
まとめ
- 安打か失策かは、「普通の守備」でアウトにできたかで決めます。基準は、そのリーグ・そのクラスの平均的な野手で、プロではありません
- 判断に迷ったときは、安打にするのが公認野球規則の考え方です。好守備でもアウトにできなかった打球は安打です
- 正面の打球でも、速ければ安打にすることが多いです。いちばん迷うのは、ファンブルや送球のそれがあった内野安打性の打球です
- 触れずに落ちたフライも、普通に捕れたなら失策です。一方、判断のミスやゆっくりした処理は、失策にしません
- 安打の後の余分な進塁や、封殺を狙った送球の落球など、安打と失策を分けて記録する場面があります
- 失策と記録すると、打者の打率・出塁率は下がり、投手の被安打・自責点は増えません
- 判断はチームでそろえ、迷う打球は試合の後に相談して決めましょう
安打と失策の判断がそろっていると、打率・防御率を、試合やシーズンをまたいで同じ物差しで比べられます。打率の数え方は「打率とは?」、失策での出塁が入る BABIP は「BABIPとは?」で解説しています。Bmcs は無料で、スマホから試合のスコアを入力できます。まずはサンプルチームで体験してみてください。