暴投(ワイルドピッチ、WP)は投手の責任、捕逸(パスボール、PB)は捕手の責任として記録されます。どちらも、投手の投球を捕手が止められず(捕りきれず)に走者が進んだときに付き、分かれ目は捕手が普通の守備で止められた投球かどうかです。止められないほどそれた投球は暴投、普通に捕れるはずの投球を捕手が捕れなかったら捕逸になります。
この記事では、暴投と捕逸の分け方と、記録が付かない場面、成績への影響を整理します。いちばん違いが出る自責点の扱いと、Bmcs での入力方法も解説します。規則は、公認野球規則の 9.13・9.07・9.12・9.16 に出てきます。
暴投になる投球、捕逸になる投球
規則の言い方(9.13)をまとめると、次のようになります。
| 暴投(WP) | 捕逸(PB) | |
|---|---|---|
| 責任 | 投手 | 捕手 |
| 投球 | 高すぎる・低すぎる・横にそれすぎるなどで、捕手が普通の守備では止められない・処理できない | 普通の守備なら捕れる・止められる投球 |
| 付く条件 | その投球で、走者が進塁したとき | その投球を捕手が捕れず、走者が進塁したとき |
「普通の守備」とは、そのリーグ(レベル)で、そのポジションの平均的な選手が、グラウンドや天候の状態も考えて見せる守備のことです(出典:MLB.com「Ordinary Effort」)。名捕手なら止められたかどうかではなく、そのレベルの平均的な捕手が止められたかどうかを、スコアをつける人が判断します。安打か失策かを分ける基準と同じ考え方です(「ヒットかエラーか?」)。
捕手に届く前に、地面やホームプレートに触れた投球(ワンバウンドの投球)を、捕手が止められず、走者が進んだときは、暴投です(9.13(a))。同じ投球でも、捕手が止められたなら、暴投にはなりません。
迷いやすい場面
- 高めや外角にそれたが、捕手が手を出せば捕れそうだった:普通の守備で届く範囲なら、捕れなかった捕手の責任(捕逸)になりえます。大きく外れて、普通の守備では届かないなら暴投です
- 走者がスタートを切っていた:暴投・捕逸ではなく、盗塁になることがほとんどです。いちばん迷う場面なので、次の節で説明します
- 走者が進まなかった:暴投も捕逸も付きません。規則は、投球がそれても走者が進塁しなければ記録しないとしています(打者が振り逃げで一塁に生きたときは別です)
- 走者が進む前にアウトが取れた:投球がそれても、捕手が拾い直して、進もうとした走者をアウトにできたときは、暴投も捕逸も付けません(9.13 の注)。走者が進塁してはじめて付く記録だからです。たとえば、一塁走者が二塁へ向かい、捕手が拾い直して二塁でアウトにしたときです。このとき、ほかの走者(三塁走者など)が進んでいたら、その進塁は暴投・捕逸ではなく、野手選択(野選)による進塁として記録します(9.13 の注。野選は「野選とは?」で説明しています)
盗塁か、暴投・捕逸か
走者が盗塁のスタートを切っているときに投球がそれると、盗塁にするか、暴投・捕逸にするかで迷います。分かれ目は、走者が投球より先にスタートを切っていたかです。
公認野球規則 9.07(a) は、走者が投手の投球に先立って次塁へスタートを切っていたときは、その投球が暴投や捕逸になっても、暴投・捕逸とは記録せず、走者に盗塁を記録するとしています。スタートを切っていたかどうかは、スコアをつける人が見て判断します。
| 場面 | 記録 |
|---|---|
| 走者が投球の前にスタートを切っていて、投球がそれて進塁した | 盗塁(暴投・捕逸は付けない) |
| 投手が投げたあとに、走者が走り出して、投球がそれて進塁した | 暴投か捕逸 |
| 走者が動いていなかったのに、投球がそれて進塁した | 暴投か捕逸 |
投球の前にスタートを切っているのは、盗塁を狙った走者です。そのため、盗塁の場面で投球がそれたときは、ほとんどが盗塁になります。なお、打者が打って走者が進んだときは、盗塁にはなりません(打者の打撃による進塁です)。
2022年8月14日の阪神対中日では、9回表1死一・三塁でスリーバントスクイズを空振りして三振になり、捕手が捕れなかった投球の間に三塁走者が還りました。見た目は暴投でしたが、三塁走者が投球より先にスタートを切っていたと判断され、暴投ではなく、盗塁(重盗)と記録されています(出典:中日スポーツ)。
余分に進んだときは、盗塁と暴投・捕逸の両方
盗塁のスタートを切った走者が、投球がそれたせいで余分に進んだときは、盗塁に加えて、暴投・捕逸も記録します(9.07(a))。
- 一塁走者がスタートを切り、投球がそれて三塁まで進んだ:一塁から二塁までは盗塁、二塁から三塁までは暴投(捕手のミスなら捕逸)です。盗塁も暴投も、1つずつ付きます
- 一塁走者がスタートを切り、投球がそれた間に、スタートを切っていなかった三塁走者も進んだ:一塁走者の進塁は盗塁、三塁走者の進塁は暴投(捕逸)です。三塁走者もスタートを切っていたなら、2人とも盗塁(重盗)です
成績はどう変わる?
| 成績 | 暴投 | 捕逸 |
|---|---|---|
| 投手の記録 | 暴投が1つ付く | 付かない |
| 捕手の記録 | 付かない | 捕逸が1つ付く |
| 失策 | 付けない(9.12(f)) | 付けない(9.12(f)) |
| 守備率 | 入らない | 入らない(失策ではないため) |
| 得点が入ったときの打点 | 付かない(打者の打撃によらない得点) | 付かない |
| 得点が入ったときの自責点 | 付く(投手の責任) | 捕逸がなければ還れなかった点は付かない |
暴投も捕逸も失策ではないので、守備率には響きません。守備率は(刺殺+補殺)÷(刺殺+補殺+失策)で、ミスとして数えるのは失策だけだからです。守備の数字だけを見ると、捕逸の多い捕手でも守備率は下がりません。捕手の出来を見るときは、捕逸の数もあわせて見ましょう。
打点が付かない理由は、「打点とは?」で説明しています。
自責点がどう変わるか
暴投と捕逸でいちばん差が出るのが、自責点です。
- 暴投:投手だけの責任なので、四球やボークと同じように、自責点につながります(9.16(a))
- 捕逸:自責点は、失策と捕逸がなかったものとしてイニングを組み立て直して決めます(9.16)。捕逸がなければ還れなかった点は、自責点になりません(9.16(d))。捕逸で進んだ走者でも、捕逸がなくてもそのあとの安打などで還れたはずの点は、自責点です
たとえば、1アウト二塁で、投球がそれて走者が三塁へ進み、次の打者の外野フライで還って、その次の打者が凡退してチェンジになったとします。
| 投球がそれた理由 | 自責点 |
|---|---|
| 暴投 | 付く(投手の責任で三塁へ進んだ走者が還った) |
| 捕逸 | 付かない(捕逸がなければ、外野フライのあとも走者は三塁まで。次の打者の凡退で3アウトになり、還れなかった) |
同じ「投球がそれて進んだ点」でも、暴投か捕逸かで、投手の防御率が変わります。自責点と失点の違いは、「防御率とは?」で説明しています。
振り逃げで打者が一塁に生きたときも、暴投か捕逸かで自責点が変わります。そちらは「振り逃げとは?」にまとめています。
レベルが上がるほど、暴投が付きやすくなる?
わたしの個人的な印象では、小学生のころは、どうしても捕逸のほうが多いです。レベルが上がるにつれて、捕手は当たり前の投球なら捕れるようになるので、だいたい暴投が付きます。プロ野球だと、ほとんどが暴投ではないでしょうか?
もちろん、サインミスや、変化球のレベルがとても高い場合は、捕逸もあります。ただ、明らかに捕逸である場合を除いて、微妙なときは、多くの場合は暴投が記録される印象です。
学生野球や草野球で見るときの注意
暴投と捕逸の決まりは、プロでも学生野球や草野球でも同じです。ただし、「普通の守備」は、そのレベルの平均的な選手で考えます。次の点にも注意しましょう。
- 暴投と捕逸は、投手と捕手の責任を分ける記録です。どちらの責任かで、投手の防御率(自責点)が変わります。判断が分かれやすいので、スコアをつける人によって基準がぶれないように、チームで決めておくと、投手も捕手も納得しやすくなります
- 走者が進まなかった投球は、記録に残りません。走者が動いたときだけ、スコアブックに付けます
Bmcs で暴投・捕逸を入力する
プレー毎の入力では、打者の結果を押す前に、グラウンドの走者を押します。「暴投(WP)で進塁」か「捕逸(PB)で進塁」を選ぶと、そのときの投手に暴投、そのときの捕手に捕逸が付いて、走者が1つ進みます。

- 2人が動いたとき:先の塁の走者から順に入れます。
- 1つの暴投で2人が進んだとき:2人目に「同じ暴投で進みましたか」と聞かれるので、「同じ暴投で進んだ」を押します。暴投は1つのままで、走者だけが進みます(捕逸も同じです)
- 得点が入ったとき:初期値は、暴投が「打点なし・自責点あり」、捕逸が「打点なし・自責点なし」です。自責点は目安なので、捕逸で進んだ走者でも、捕逸がなくても還れたはずの点は、「自責点」を押して付けます
- 走者が投球の前にスタートを切っていたとき:「暴投(WP)で進塁」ではなく、「盗塁」を選びます。暴投・捕逸の記録は付きません
- 盗塁をして、暴投・捕逸で余分に進んだとき:先に「盗塁」を入れてから、同じ走者をもう一度押して「暴投(WP)で進塁」「捕逸(PB)で進塁」を入れます
- 走者がアウトになって、暴投・捕逸を付けないとき:アウトになった走者に「その他のアウト」、ほかに進んだ走者に「盗塁にしない進塁(記録なし)」を選びます。ほかの走者の進塁は、規則では野選による進塁ですが、Bmcs では走者の記録には数えないため、記録の付かない進塁として入れます
- 振り逃げのとき:確認の画面に「暴投(WP)だった」「捕逸(PB)だった」のボタンが出ます
試合結果のみで入力する試合では、投手の「暴投(WP)」と、野手の守備の「捕逸(PB)」の欄に数を入れます。入れた数は、「投手成績詳細」の「WP」と、「野手成績詳細」の「PB」で見られます。手順は、ヘルプ「試合を入力する(プレー毎)」にあります。
まとめ
- 暴投は投手の責任、捕逸は捕手の責任です。分かれ目は、捕手が普通の守備で止められた投球かどうかです
- 走者が進塁したときだけ付きます。走者が進まなかったら、記録しません
- 走者が投球の前にスタートを切っていたときは、投球がそれても盗塁です。余分に進んだ分だけ、暴投・捕逸も付きます
- どちらも失策ではないので、守備率には入りません。走者が還ったときの打点も付きません
- 差が出るのは自責点で、暴投で進んだ走者の得点は付き、捕逸がなければ還れなかった得点は付きません
- Bmcs では、走者を押して「盗塁」「暴投(WP)で進塁」「捕逸(PB)で進塁」のどれかを選びます
迷ったときは、「捕手が普通に捕れたか」を、みんなで確認してから付けましょう。Bmcs は無料で、スマホから試合のスコアを入力できます。まずはサンプルチームで体験してみてください。