勝利投手は、チームが勝ち越したときに投げていて、そのリードが試合の最後まで続いた投手です。ただし、先発投手は5回を投げ切っていないと勝利投手になれません(勝ったチームの守備が5回の試合なら4回)。敗戦投手は、相手に渡したリードが最後まで続いたときの、決勝点に責任のある投手です。
この記事では、勝利投手・敗戦投手・セーブ・ホールドの条件を、スコアをつける人が迷いやすい場面の例で整理します。7回制の試合での考え方や、Bmcs での入力方法も解説します。勝利投手と敗戦投手は公認野球規則の 9.17、セーブは 9.19 に書かれています。ホールドは、NPB(日本のプロ野球)が決めた記録です。
4つの記録の違い
| 記録 | ひとことで言うと | 付く人数 |
|---|---|---|
| 勝利投手 | 勝ち越したときに投げていた投手 | 勝った試合に1人 |
| 敗戦投手 | 決勝点に責任のある投手 | 負けた試合に1人 |
| セーブ | リードを守って、試合の最後を投げ切った救援投手 | 勝った試合に0〜1人 |
| ホールド | リードか同点を守って、次の投手につないだ救援投手 | 1試合に何人でも |
打線の援護に左右されるので、勝利投手は投手の力だけでは決まりません。5回まで無失点でも、味方が1点も取れなければ勝利投手にはなれません。
勝ちは自チームがリードしている状態でないと付かないので、プロ野球で応援している投手が先発の試合は「早く点取ってくれよー」と思いますよね?結局その投手が投げている間は点を取ってくれずに、交代したあとにようやく点を取り出すと、、モヤっとしますね。。
先発投手の投球そのものを見たいときは、「QS(クオリティスタート)とは?」で説明している QS のほうが向いています。
勝利投手の条件
いちばん大事なのは、最後に勝ち越したときに、誰が投げていたかです。公認野球規則 9.17(a) では、次の投手が勝利投手になります。
- 投げているあいだ、または攻撃中に代打・代走を送られて退いた、その回に、チームがリードを奪った
- そのリードが、試合の最後まで一度も追いつかれなかった
守備の途中で交代した投手は、その裏の攻撃で味方が勝ち越しても、勝利投手の候補にはなりません。候補は、勝ち越したときに試合に出ていた救援投手です。
ここから、迷いやすい場面の答えが出てきます。
同点に追いつかれたら、振り出しに戻る
同点になると、勝利投手の判定は新しい試合が始まったのと同じになります。先発投手が5回を投げて3-2でリードして降板しても、救援投手が同点に追いつかれたら、先発投手の勝ちは消えます。
リードを追いつかれた救援投手は、そのあとも投げ続けて、味方が勝ち越したときに投げていれば、勝利投手になれます。
代打を送られた回に勝ち越したら、交代した投手の勝ち
たとえば、5回まで投げた先発投手が、同点の5回裏の打席で代打を送られて、その回に味方が勝ち越したとします。6回からは救援投手が投げますが、勝利投手の候補は先発投手です。「代打を送られて退いた、その回」のリードだからです。
先発投手は、5回を投げ切らないと勝てない
先発投手には、投げた回数の条件があります(9.17(b))。
| 勝ったチームの守備の回数 | 先発投手に必要な回数 |
|---|---|
| 6回以上(9回・7回・6回の試合など) | 5回 |
| 5回 | 4回 |
「投げ切る」なので、4回2/3で交代すると、大量リードでも先発投手は勝利投手になれません。この表は、延長でも、コールドゲームでも同じです。9回の試合でも7回の試合でも、必要なのは同じ5回です。
先発投手が条件に届かないときは、救援投手から選ぶ
先発投手が回数に届かなかったときは、救援投手が勝利投手になります。
- 救援投手が1人なら、その投手
- 2人以上なら、勝利に最も効果的な投球をしたと判断した1人
規則の注釈では、救援投手には少なくとも1イニングか、大事なアウトを取ることを求めていて、同じくらいの内容なら先に投げた投手を選ぶとしています。NPB では、投球回がほかの救援投手より1回以上多い投手に与えることが原則です。差が1回未満なら、登板したときの点差や失点を見て判断します(出典:NPB 記録員コラム(2017年6月))。
短く投げて打たれた救援投手には付けない
条件どおりなら勝利投手になる救援投手でも、短く投げて打たれたときは、あとに好投した救援投手に勝ちを回せます(9.17(c))。注釈の目安は、1イニング未満で自責点2以上です(前の投手が残した走者の得点も数えます)。たとえば、2点を取られてリードを追いつかれ、アウトを1つも取れずに降板した投手が、その直後の攻撃の勝ち越しで勝利投手になるのは、さすがに違和感がありますよね。そんなときのための決まりです。
敗戦投手の条件
敗戦投手は、相手に勝ち越しの点を与えて、そのリードが最後まで続いたときの、その点に責任のある投手です(9.17(d))。こちらも、同点になると振り出しに戻ります。
残した走者が決勝点になると、前の投手の負け
間違えやすいのは、打たれた投手と負ける投手が違う場面です。
たとえば、2-1でリードしている7回に、投手Aが一塁と三塁に走者を残して降板し、投手Bが2点タイムリー二塁打を打たれて、2-3で負けたとします。
- 三塁走者の得点で、同点(ここで振り出し)
- 一塁走者の得点で、勝ち越し。この一塁走者を出したのは投手A
決勝点の走者は投手Aの走者なので、敗戦投手は投手Aです。打たれた投手Bではありません。継投のときに走者の責任をどう数えるかは、「投手が交代したときの、野選と失点の責任」で説明しています。
失策がからんでも、敗戦投手になる
敗戦投手は、自責点かどうかに関係なく決まります。味方の失策で出た走者が決勝点になり、その試合の自責点が0でも、その走者に責任のある投手が敗戦投手です。規則どおりですが、投手にとってはつらい記録ですよね。自責点の考え方は、「防御率とは?」にまとめています。
なお、先発投手の5回の条件のようなものは、敗戦投手にはありません。1回で降板しても、そのときのリードが最後まで続けば敗戦投手です。
セーブの条件
セーブは、救援投手がリードを守り切ったときの記録です。公認野球規則 9.19 では、次のすべてを満たす投手に付きます。
- 勝った試合の、最後を投げ切った
- 勝利投手ではない
- 3分の1イニング以上を投げた(アウトを1つ以上取った)
- 次のいずれかに当てはまる
- 3点以内のリードで登板して、1イニング以上を投げた
- 同点の走者が、塁上・打席・次打者のどこかにいる場面で登板した(イニングは問わない)
- 3イニング以上を投げた(点差は問わない)
1は、いちばんよく見るセーブです。2は、点差が開いていても走者がいれば当てはまります。次の表が、登板したときの走者の数ごとの、2に当てはまる点差です。
| 登板したときの走者 | 2に当てはまるリード | 例 |
|---|---|---|
| なし | 2点まで | 2点リードなら、次打者が同点の走者 |
| 1人 | 3点まで | |
| 2人 | 4点まで | |
| 満塁 | 5点まで | 5点リードなら、次打者が同点の走者 |
たとえば、4点リードの9回に走者なしで登板して1イニングを無失点に抑えても、セーブは付きません。同じ4点リードでも、走者2人の場面で登板して最後まで投げ切れば、アウト1つでもセーブです。
3は、10-0 でも付きます。たとえば9回の試合で、先発投手が6回まで投げて勝利投手の条件を満たし、7回から最後まで投げ切った救援投手は、点差に関係なくセーブです。
勝利投手とセーブは、同じ投手に付かない
セーブの条件に「勝利投手ではない」があるので、1人の投手に両方は付きません。実は NPB でセーブが始まった1974年は、この決まりがありませんでした。その年に勝利投手とセーブの両方が記録された投手が1人だけいて、翌年に決まりが足されたため、NPB で唯一の記録になっています(出典:NPB 記録員コラム(2018年12月))。
先発投手が回数に届かなかった試合で、救援投手の投球回に差があるときは、最後を投げた投手が勝利投手になってセーブが付かないこともあります。NPB の記録員コラム(2023年4月)が、その例を解説しています。
ホールドの条件
ホールドは、勝ちも負けもセーブも付かなかった中継ぎの投手を評価するための記録です。公認野球規則の勝利投手・セーブの項目とは別に、NPB が2005年に今の形を決めました(出典:NPB の発表(2005年2月3日))。メジャーリーグでは公式の記録ではありません(出典:ベースボールチャンネル)。
救援投手で、勝利・敗戦・セーブが付かなかった投手のうち、次のどちらかを満たす投手に付きます。
- セーブの条件を満たす場面で登板して、アウトを1つ以上取り、リードを保ったまま降板した
- 同点で登板して、アウトを1つ以上取り、登板してから、前の投手が残した走者も含めて1点も取られずに降板した
2は、登板のあとに味方が点を取っていれば、失点してもリードを保って降板すれば付きます。また、走者を残して降板して、その走者が還って同点か逆転になると、付きません。
負けた試合でも付く
条件には試合の勝ち負けが入っていないので、チームが負けた試合でもホールドは付きます。1点リードの8回を抑えた投手には、9回に抑えの投手が逆転されても、ホールドが残ります。また、1試合に何人でも付きます。
ホールドと救援での勝利を足した数がホールドポイント(HP)で、NPB の最優秀中継ぎ投手はこれで決まります。
試合の例で決めてみましょう
9回の試合で、次のように進んだとします。
| 回 | 投げた投手 | スコア(自チーム-相手) | できごと |
|---|---|---|---|
| 1〜6回 | A(先発) | 3-2 | リードして降板 |
| 7回表 | B | 3-3 | 同点に追いつかれる |
| 7回裏 | (攻撃) | 4-3 | 味方が勝ち越す |
| 8回 | C | 4-3 | 無失点で降板 |
| 9回 | D | 4-3 | 無失点で試合終了 |
答えは、次のとおりです。
| 投手 | 記録 | 理由 |
|---|---|---|
| A | なし | 6回を投げたが、7回に同点になり振り出しに戻った |
| B | 勝利投手 | 7回裏に勝ち越したとき、Bはまだ交代していなかった。そのリードが最後まで続いた |
| C | ホールド | 1点リードで登板し、リードを保ったまま降板した |
| D | セーブ | 1点リードで登板し、1イニングを投げて試合を終えた |
相手チームの敗戦投手は、7回裏の勝ち越しの点に責任のある投手です。
学生野球や草野球で見るときの注意
プロのように公式の記録員がいない試合では、ここまでの決まりを、スコアをつける人が当てはめることになります。チームの記録を付けるときは、次の点に注意しましょう。
- 7回制の試合でも、規則の条件は5回です。先発投手が4回で交代する試合が多いチームでは、勝利が救援投手に回り続けます。規則どおりで問題ありませんが、大会やリーグに決まりがあれば、それに従いましょう。たとえばアメリカの大学野球(NCAA)では、8回未満の試合は先発投手が4回で勝利投手になれます(出典:NCAA 10-25)。ソフトボールなど、競技の決まりが別にあるときも同じです
- 4回以下で終わった試合は、規則の 9.17(b) に条件が書かれていません。コールドゲームが3回や4回で成立する大会では、誰に付けるかをシーズンの前にチームで決めておくと迷いません
- ホールドは、付けるかどうかをチームで決めましょう。セーブまでにして、ホールドは付けないのも1つの方法です。付けるなら、中継ぎの投手を評価できます
- 「最も効果的な投球をした救援投手」は判断が分かれます。投球回の多い投手にする、のように決め方をチームでそろえておくと、後から見ても納得できます
Bmcs で勝利投手を入力する
Bmcs は、プレーから成績を自動で集計しますが、勝利・敗戦・ホールド・セーブは自動では決めません。ここまで見てきたように、決勝点の責任や、最も効果的な投手の判断が入るためです。「試合結果の入力・確定」の画面で、投手のカードを開いて、「勝敗HS」の欄から「勝」「負」「H」「S」を選びます。試合結果のみで入力する試合でも、同じ欄です。

- 1人の投手に選べるのは、1つだけです。規則(ホールドは NPB の決まり)でも、勝利とセーブ、勝利とホールドが同じ投手に付くことはありません
- 勝利投手と敗戦投手は、1試合に1人ずつです。Bmcs は人数の確認をしないので、選び間違いに注意しましょう
- 確定した後にプレーを直して「再集計する」を押しても、確定した内容は同じ投手に引き継がれます(試合は「確定前」に戻るので、もう一度「確定する」を押しましょう)。ただし、試合の勝敗が変わると、合わなくなった勝利・敗戦・セーブは消えるので、選び直しましょう。ホールドは残ります
選んだ記録は、成績の画面の「勝利」「勝率」「ホールド」「セーブ」の順位に出ます。

勝率は、勝利 ÷(勝利 + 敗戦)で計算します。勝ちも負けも付かなかった試合は、勝率に入りません。勝率の順位に載るのは、規定投球回に届いた投手です(「規定打席・規定投球回とは?」)。Bmcs のホールドの順位はホールドの数で、ホールドポイントはありません。
まとめ
- 勝利投手は、最後に勝ち越したときに投げていた投手です。代打を送られて退いたその回の攻撃で勝ち越しても、退いた投手に付きます
- 先発投手は5回(勝ったチームの守備が5回の試合なら4回)を投げ切ることが条件です。7回制の試合でも5回です
- 同点になると、勝利投手・敗戦投手の判定は振り出しに戻ります
- 敗戦投手は、決勝点に責任のある投手です。残した走者が決勝点なら前の投手で、自責点かどうかは関係ありません
- セーブは、最後を投げ切った救援投手に、3点以内のリードで1イニング、同点の走者がいる場面、3イニング以上のいずれかで付きます
- ホールドは NPB の記録で、負けた試合でも、1試合に何人でも付きます
勝利投手の欄は、試合の流れを思い出しながら選ぶ、スコアをつける人の最後の仕事です。Bmcs は無料で、スマホから試合のスコアを入力できます。まずはサンプルチームで体験してみてください。